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【LIVE】名目GDP1100 兆円と構造的円安

A recording from きゃお|元プロアスリート×投資歴21年目×シングルマザー's live video
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木曜ライブ、参加できなかった人へ。

「2040年までに、GDPを1100兆円にします」

政府が出した資料に、こう書いてありました。

今が大体600兆円だから、ほぼ倍増です。

一見、日本経済がすごく元気になる話に聞こえます。

でも、ちゃんと分解すると、まったく違う顔が見えてきます。

これ、実は政府自身のインフレ宣言なんです。

今日は、それがどういうことなのか、一本の線でつなげて書いておきます。

これが、実際に政府が出した資料です。

骨太方針2026 政策ファイル5ページ目:2040年度GDP1100兆円・実質1%超/名目3%超の成長目標・投資枠創設・債務残高対GDP比の安定的低下が1枚にまとまっている(出典:内閣府)
骨太方針2026 政策ファイル5ページ目:2040年度GDP1100兆円・実質1%超/名目3%超の成長目標・投資枠創設・債務残高対GDP比の安定的低下が1枚にまとまっている(出典:内閣府)



政府が出した数字は、実はインフレ宣言だった

私、元プロアスリートなんですけど、現役の頃、シーズンの終わりに「去年より結果を出せた」って一瞬喜びそうになった年が何度かありました。

でも冷静に振り返ると、相手のレベルが落ちていただけだったりする。

自分の中身が本当に強くなったのかは、まったく別の問題なんです。

表面の数字が伸びているのか、実力そのものが伸びているのか。

この2つを分けて見る癖が、今の投資家としての判断基準にもなっています。

名目GDP1100兆円という数字も、まさにこれと同じ構造でした。

骨太方針という、政府が毎年出す経済の基本方針があります。

会社で言えば、今期はこの方向で経営していきます、という経営方針みたいなものです。

今年出た骨太方針2026に、2040年度にGDPを1100兆円に近づけるという目標が入っていました。

原文には「名目」とは書かれていません。

でも、あわせて「実質1%超え、名目3%超えの成長をできるだけ早期に定着させる」という成長率の目標も書いてあります。

じゃあ、実際に何%で成長したら、600兆円は2040年度(14年後)にいくらになるのか。並べてみました。

見ての通り、政府が自分で掲げている「名目3%超」を、そのまま14年続けても908兆円にしかなりません。

1100兆円に届くのは、4.4%前後まで成長率を引き上げ続けた場合だけです。

だから、この1100兆円は、事実上、名目GDPの話だと思っています。

AI・半導体・GXなど17の成長分野に、官民合わせて370兆円超を投資するロードマップも示されました。

数字だけ見ると、すごく威勢のいい成長戦略に見えます。

でも、ここで一回立ち止まって、名目GDPって何なのかを確認したいんです。



リンゴが2倍の値段になっても、豊かになったわけじゃない

名目GDPは、その時々の価格でそのまま計算した金額。

実質GDPは、物価の変動を取り除いて、実際どれだけ作られたかを見る金額です。

1年目、リンゴを1個100円で10個売りました。GDPは1000円。

2年目、リンゴが1個200円に値上がりして、でも売れた個数は同じ10個。

名目GDPは2000円、2倍に増えたように見えます。

でも作られたリンゴの量は、変わらず10個のまま。

実質GDPで見れば、1000円、何も変わっていません。

値段が上がっただけです。

名目GDPが2倍になっても、実質的な豊かさは増えていない。

お金の価値が半分になっただけ。

これを頭に入れて、もう一度1100兆円を見てください。

日本の実力、潜在成長率は、今0.4%しかありません。

その国が持っている設備や人、技術力だけで無理なく出せる成長率のことです。

内閣府が出している実際のグラフです。

骨太方針2026 政策ファイル3ページ目:日本の潜在成長率は現在0.4%まで低下、米国2.3%・英国1.3%と比べても際立って低い(出典:内閣府「国民経済計算」等)
骨太方針2026 政策ファイル3ページ目:日本の潜在成長率は現在0.4%まで低下、米国2.3%・英国1.3%と比べても際立って低い(出典:内閣府「国民経済計算」等)

実力のまま名目GDPを倍増させるには、残りのほとんどをインフレで埋めるしかない。

これが、この目標の裏側にある計算です。

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上げたいのに、上げられない金利のジレンマ

ここからが今日の本題です。

インフレになれば、本来は金利も一緒に上がるはずなんです。

モノの値段がどんどん上がる世界で、それに見合う金利をもらわないと、お金を貸した方が実質的に損をします。

これを数式にしたのが、フィッシャー方程式です。

長期金利=潜在成長率+期待インフレ率、この足し算だけ。

日本の場合、0.4%+インフレ目標2%で、適正な長期金利は2.4%くらいになる計算です。

じゃあ、なぜ日本はそこまで金利を上げないのか。

ここ、誤解しやすいポイントです。

「インフレが進むと利上げしにくくなる」と思っている人がいるかもしれませんが、順番が逆なんです。

普通の国では、インフレが進めば進むほど、利上げしたい圧力が強くなります。

日本の問題は、借金の大きさです。

これまで積み上がった国債の残高がとても大きい。

金利が上がると、その利子の支払い、利払い費が急増して、財政を圧迫してしまいます。

インフレが利上げを妨げているんじゃない。

借金の大きさが、本来必要な利上げを妨げている。

実際、足元の長期金利は「骨太ショック」と呼ばれる動きで一時2.87%まで急上昇しました。

この時点でもう、財政への圧力がかなり出ている状態です。

だから政府や日銀には、インフレは進めたいけど金利はそこまで上げたくない、という圧力がかかり続けます。

これが、実質マイナス金利です。

物価が上がるスピードに、金利が追いつかない状態のこと。

物価上昇率2%、預金金利0.5%だとしたら。

額面は0.5%増えても、モノの値段は2%上がっている。

差し引き1.5%分、購買力が目減りしています。

私、投資家としてこれ、すごく実感があります。

名目の利回りだけ見て安心するのが一番危ない。

実質で見ないと、資産が目減りしてることに気づけません。

国のレベルでも、まったく同じことが起きようとしています。



1000兆円の現預金は、黙っていても目減りしていく

日本の個人の金融資産は約2300兆円。

そのうち現預金が約1000兆円。

しかもその6割以上をシニア層が持っています。

物価が上がっているのに、預金の金利がそれ以下のままだと、この1000兆円は銀行に置いておくだけで実質的に目減りしていきます。

じゃあ、このお金は実際にどう動いているのか。

今すでに起きているのは、新NISAを使った若い世代を中心とした、海外株式インデックスへの投資です。

S&P500やオルカンといった商品を買う人が、この数年でかなり増えました。

これは、円を売ってドル建ての資産を買う動きそのもの。

積み重なると、構造的な円安圧力になります。

じゃあ、現預金の6割以上を持つシニア層はどうなのか。

ここが面白いところなんですが、シニア層は株のようなリスクの高い投資には、そもそも手を出しにくい。

だから政府が今検討しているのが、株でも現預金のままでもない、個人向け国債という受け皿です。

名目GDP1100兆円という目標。

インフレ容認が前提。

でも利払い費のせいで金利は抑え込まれる。

実質マイナス金利。

現預金が目減りする。

若い世代を中心にNISA経由で海外資産にお金が向かう。

この一本の線が、ほっといたら円安になるロジックです。

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骨太ショックは、誤解だったのか、警告だったのか

じゃあ、この通りに進むんでしょうか。

ここは見方が分かれます。

骨太方針2026の原案が出たとき、これまで中心だったプライマリーバランス黒字化という目標が、書きぶりから外れました。

これを見た市場の一部が、財政のタガが外れた、と受け止めた。

国債が売られて、長期金利が一時2.87%まで急騰しました。

プライマリーバランス、略してPB。

毎月のお給料で、その月の生活費をちゃんとまかなえているか、という話です。

黒字化イコール借金がゼロになる、という話ではありません。

過去の借金の利子は、黒字になっても別に払い続ける必要があります。

この方針づくりに関わった民間議員は、骨太ショックは市場の誤解だと説明しています。

根拠は、格付け会社の見方です。

ムーディーズやフィッチ、S&P。

国債の返済能力を評価する会社、個人で言えばクレジットスコア会社のようなものです。

プライマリーバランス単体の数字が多少変わったからといって、それだけで即座に評価が下がるわけじゃない。

見ているのは、債務残高対GDP比。

国の借金の残高を、経済規模と比べて何倍あるか、という比率です。

年収500万円の人が1000万円の借金をしていたら、年収の2倍。

年収がどんどん増えていけば、借金の絶対額が変わらなくても、比率は軽くなっていきます。

骨太方針2026がやろうとしているのは、まさにこれです。

プライマリーバランスの黒字化だけにこだわるんじゃなくて、経済を成長させながら、この比率を時間をかけて下げていく。

20年ほど前、小泉政権の頃は、赤字は絶対ダメ、という緊縮財政の考え方がずっと主流でした。

当時の政治の現場にいた人が、洗脳に近いレベルで刷り込まれていた、と振り返っているくらいの強さです。

でも今の世界標準は、単純に収支をゼロにすることじゃない。

骨太方針2026は、この20年来の考え方から抜け出そうとしている転換点でもあります。

一方で、無視できない現実もあります。

円安に向かいやすい構造は、大きく2つの力でできています。

歳出が膨らみやすい力と、金利を上げにくい力。

これまでの日本の予算は、当初予算をギリギリまで絞り込んで、年度途中の補正予算で結局多めに使う、というその場しのぎを繰り返してきました。

骨太方針2026は、複数年度にわたる投資枠を正式に作って、これを変えようとしています。

計画的で規律がある、良い変化のはずです。

実際の資料には、この投資枠の柱がこう書かれています。

  • 成長投資に徹底てこ入れ(日本成長戦略・地域未来戦略に基づく投資を対象化)

  • 要求上限(シーリング)の撤廃、必要額を適切に要求

  • 複数年度の予算措置で、民間の予見可能性を高める

  • 財政の持続可能性、債務残高対GDP比を安定的に引き下げていく中で可能な規模を精査

骨太方針2026 政策ファイル9ページ目:「強く豊かな日本」投資枠の4本柱。要求上限撤廃・複数年度予算措置・補正予算は緊要性の高いものに限定、恒常施策は当初予算で措置と明記されている(出典:内閣官房)
骨太方針2026 政策ファイル9ページ目:「強く豊かな日本」投資枠の4本柱。要求上限撤廃・複数年度予算措置・補正予算は緊要性の高いものに限定、恒常施策は当初予算で措置と明記されている(出典:内閣官房)

でも、日本の官僚機構には、前例踏襲、去年もらえた予算は今年も減らさない、という文化が根強くあります。

新しい枠を、優先順位をつけた計画的な投資ではなく、とりあえず使い切る財布として扱ってしまったら。

規律を強めるはずの改革が、逆に歳出を膨らませる入り口になりかねません。

8月末、各省庁が来年度の予算を財務省に要求する「概算要求」があります。

これが計画通りに機能するかどうかの、最初のチェックポイントです。

2つ目の力、金利を上げにくいことは、もう話した通りです。

巨額の債務残高という構造そのものは、政権が誰であっても変わりません。

誰か一人が意図しているわけじゃなくても、この2つの力が働き続ける限り、構造としては円安の方向に向かいやすい。

これが私の見方です。



額面の給料が増えても、楽にならない理由

ここまでは、国全体の構造の話でした。

ここからは、家計にどう跳ね返ってくるかです。

名目GDPが増えても、私たちの実質賃金は自動的には上がりません。

日本では1990年代後半のデフレ突入以降、物価に合わせて課税ラインをずらす仕組み(ブラケットスライド)が止まったままなんです。

物価が上がって、生活の実感は何も変わっていないのに、額面の給料だけ増えたとします。

本来なら、税率の区切りラインも一緒に引き上げるべきなのに、その調整が止まっている。

増えた分だけ、自動的に高い税率がかかってしまう。

これを「インフレステルス増税」と呼ぶ人もいます。

もう一つ、資産の置き場所の話です。

現預金の6割以上を持つシニア層は、株のようなリスク資産には向かいにくい。

じゃあ、このお金は銀行に置かれっぱなしで、目減りしていくしかないのか。

ここで動き出しているのが、個人向け国債の魅力向上という、骨太方針に入った文言です。

イタリアでは2023年から、保有期間が長いほど利率が上がる仕組みや、金融所得課税の引き下げといった優遇策を導入しました。

株ほどのリスクは取りたくないけど、現預金のままでは目減りする、という層にちょうど刺さる設計です。

結果、個人の国債保有比率を8%弱から14%まで一気に伸ばしています。

日本は今、まだ2%です。

まだ具体的にどこまでやるかは決まっていません。

でも、方向性としては動き出しています。



今日の3つの持ち帰り

  • ひとつ、名目GDP1100兆円は、実力(潜在成長率0.4%)だけでは届かない数字。財政の制約から、差分はインフレで埋める前提になっています

  • ふたつ、インフレが進んでも、利払い費を抑えたい圧力から金利は上げにくく、実質マイナス金利が続きやすい構造があります

  • みっつ、現預金1000兆円が目減りする中で、NISA経由の海外株投資という形で構造的な円安圧力が働きうる。名目の数字が増えても、実質賃金は自動的には上がりません

シーズンの結果だけを見て喜ぶのか、その中身、実質を見るのか。

国の成長にも、まったく同じ問いが要ります。

円のまま銀行に置いておくのも、実は何もしていないわけじゃなくて、ひとつの選択です。

良いとか悪いとかじゃなく、まずはその構造を知っておくことが大事だと思っています。

今日の話、ピンときたところがあれば、オープンチャットで教えてください。

私が普段やってる『はじめてのお金のはなし』のオープンチャットには、こういう構造の話をシェアする仲間が、いま1,000人近くいます。

ひとりで抱えたくない人は、あとで覗いてみてください。

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